サルコペニアは骨格筋量、筋力の低下で定義される、転倒リスクや死亡に関わる進行性の骨格筋疾患であり、最近は高齢者のみならず壮年期からの予防や介入が必要と考えられています。我々は、サルコペニア高齢者を対象とした、ミトコンドリア機能賦活化作用を有する食品(5-アミノレブリン酸リン酸塩含有食品)を摂取することによる骨格筋機能回復および安全性を検討する研究(SALADS)と、サルコペニアリスクのある高齢者糖尿病患者を対象とした、抗老化機序として注目されているNAMPT-NAD+経路賦活化作用を有する糖尿病治療薬であるイメグリミンの骨格筋の量と質に与える影響を検討する研究(EMERALDAS)を、それぞれ本学を含めた多施設おいて、ランダム化比較試験(RCT)として実施しています。これらの結果は、新しいサルコペニア治療法の確立に寄与することが期待されます。
betway必威体育高齢者医療センターは約7割が地域包括ケア病床です。地域包括ケア病床とは、急性期治療が終了した後の患者さんを対象に在宅復帰を支援するための病床です。通常はリハビリテーションや退院に向けた計画や生活環境の調整などが主に行われますが、当院では身体のみならず栄養や精神?心理状態に対する積極的な介入を行う「リハ栄養」を、老年医学的手法を基づいて多職種協働で実施することを特徴としています。その効果を検証するため、老年医学の中核施設である国立長寿医療研究センターとの共同し、地域包括ケア病床レジストリ研究(RISE-F)を実施しています。この研究により高齢者が持つレジリエンスに関連する要因を解明し、状態改善に寄与する介入パターンの解明を目指します。
当院にはフレイルの予防を目的とした運動指導を目的とした開設されたフレイルセンターがあります。健康運動指導士が地域高齢者のフレイルの予防に限らず、当院に通院されている身体的あるいは認知的フレイルの患者に対して、身体面のみならず認知面の改善を考慮した指導を行っています。利用者の特徴からいくつかのパターンに分け、それに基づいて指導を実施すると改善が得られやすいことが経験的にわかってきており、利用者の機能評価(ADL、認知機能、身体機能、自律神経機能など)との関係からフレイル改善の要因を明らかにする研究を進めています。これにより個々のフレイル高齢者に最適化した運動プログラムを実施できるようになることが期待されます。